「タバコどこいったかな」

ビクッ。

食べ終わった美芳君がタバコを探す。

「猛、今はタバコやめろ」

翔吾がそれを止めた。

「ん…ああ、まぁいいか」

美芳君はタバコを探すのを止めた。

やばい。

やばいやばい。

「私…そろそろ行くね。ご飯代…」

「いいよそんなの!」

美芳君は笑顔でいう。

「あ、りがとう。ごちそうさまでした」

「心葉里、送ってく」

翔吾が心配そうにしてる。

心配かけちゃダメだ。

「大丈夫だよ」

急いで鞄をもって、美芳君のお父さんにも挨拶してお店をでる。

はぁはぁ…。

苦しい。

こんなの早く慣れて欲しいのに…。

また拒絶反応を起こす。

タバコ。

聞いたり見たりするだけで苦しくなって軽く発作を起こす。

こんなんじゃ生活していけないのに。

私は学校から離れた方向に向かってる。

お店の前の入口から出たから遠回りだけど、そこから駅に向かう。

上手く歩けない。

薬…。

鞄のポケットから薬を取り出す。

ああ、そういえばお店出る時東国くんの声聞いてないな。

どう思ったかな…。

みんな、絶対変だと思ったよね…。

それでもみんなが出てこないのは翔吾が止めたか、そこまで私のことを気にしていないか。

どっちでもいいけど。

早く帰ろう。

傷口が疼いてきた。

痛い。

痒い。

お願い、落ち着いてよ。

「心葉里!」

東国…くん?

ふらついていた私の足が少し治まる。

こんなところ見られたくない。

「…どうしたの?東国君」

「……いや、送るよ」

何かを言いたそうにしている。

でも雰囲気がそうさせない。

お願い、何も聞かないで。

「大丈夫だよ」

「駅まで…」

東国君は静かにそう言って少し先を歩き始めた。

聞かないでくれた。


聞かれても答えないと思うけど。


私は東国君の後ろを静かに付いていく。


背中…大きいな。


男の人…なんだよね。


なんで、恐怖を感じないんだろう。


他のみんなもそう。


東国君の友達だってわかってるから怖くないのかな。


なんで?


私、変なのかな。


見た目は怖そうなのに。


全然怖くないし。


「心葉里…自転車きてる」


東国君はそっと止まって私にかぶさる。


「あ、ありがとう…」


今、ちょっとだけビクッとした。

……。

…やっぱり東国君もちゃんと男の人だ。


よかった。


……。


なんで…?


…なんでよかったの?


男の人は怖いだけなのに。


怖くない東国君が男の人でよかったなんて…。


そんなこと思いたくない。


一緒にしなくない。


でも、男の人として意識してしまう私がどこかにいて。


それが嫌で自分で気付かないように感情を消し去る。


「もう、ここでいいよ」


駅の少々手前。


これ以上一緒にいたくない。


変な事を考えてしまう。


頭の中がぐちゃぐちゃになって気持ち悪い。


「気をつけて…帰れよ」


東国君は少し心配そうにしている。


「ありがとう、お母さん迎えに来るから大丈夫だよ」


「そっか、じゃあ…またな」


「うん、また…ね」

私は東国君が引き返していく後ろ姿を呆然と眺めていた。