その夜あたしは懐かしい夢をみた。


私がまだ小学5年生の夢。


その日はお母さんが会社で倒れて入院して、

私は一時裕也の家に預けられた。

結局すぐ退院できる軽いものだったんだけど、私は心配で心配で。

でもお世話になっている裕也の家族にそんなこと言えなくて。

ギュウッと拳を握りながら、ソファでテレビを見ていた。

そんな時


「大丈夫」

突然隣にいる裕也に声をかけられ、横を向く。

「え‥‥?」

「絶対助かるって。だから、大丈夫」
 
じっと目を見つめられたので、恥ずかしくなってつい視線をはずした。

だっていつも

裕也とは言い合いばっかりで、

お互い慰めたりなんてしたことなんてない。

だから、思ってもみたくて

よけい嬉しくて

あたしはその言葉がすごく心強かった。


「あ‥ありがとう」

「え?」

能天気に訊き返す

「だから、ありがとうって言ったの!」

真っ赤になりながら言う。

「あぁ…。うん」

裕也も聞き慣れない言葉に戸惑いながら答える。


きっと、そんな小さな嬉しい気持ちが幾重にも積もって

いつの間にか

裕也じゃなきゃ駄目になっていたんだ…