さっき叩かれた時に唇の端が切れたらしい。


その部分を葛原が、添えてた右手の親指で強く擦る。


思わず痛みに顔をしかめる。


「もしも失敗すれば、潤は二度と堅気には戻れないと思え。
あと、お前も……」


葛原の人差し指が、あたしの顎から胸まで線を描く。


「一生俺のモノだ。」


触んないでよ。


気持ち悪い。


そう喉まで出かかっているのに、恐怖で声が出ない。


唇が、震える。


一歩も動けない。


葛原が、そんなあたしの様子を見て、また気持ちの悪いニヤリとした笑顔をする。


「まぁ、栗山の女にまでなれたら上出来だな。男っつーのはバカだから、惚れた女にはトップシークレットの事までゲロっちまうんだよな~。そうなりゃこっちのもんだ。

それに……」


葛原は、さらにあたしに顔を近付ける。


「惚れた女に裏切られ、更にその女が目の前で俺のモノだって分かったら……。」


葛原はあたしの喉元に口付ける。




「栗山は崩れる。煌龍は、おしまいだ。」