支度を終え、家を出る。


ボロくなった鍵穴は、噛み合わせが悪くてなかなか上手く閉まらない。


ガチャガチャ雑に回すと漸く閉まり、
時計を見るとかなりのタイムロス。


ロスした時間を埋めようと小走りすると、待ち受けていたのは地獄坂。


登校中の生徒達が、口々に文句を言いながら登って行く。


重たい足を引きずるように、それを登りきると、あたしの通っている高校が目と鼻の先に見えてくる。


伝ってきた汗を拭いながら目を凝らすと、校門の前に小さな人だかりが出来ているのに気が付く。


何かと思って良く見るが、コンクリートから上る陽炎が邪魔をする。


それよりも、早く冷房の効いた校内に入ろうと足を早めると、


「茉弘。」


そう呼び止められて、私は振り返った。


「……潤?」