百合さんが直ぐに補足してくれる。
「ここら辺の暴走族は、総長に彼女が出来たら"姫"として族全体で守るしきたりがあるんだよ。
あんたは知ってると思うけど、総長の女は族の中の最強の弱味だからね。その族を潰そうってなったら、汚い奴らはまずそこを狙う。あたしが知ってる中でも、そこから崩された族がいくつかあったよ。
自分の女をレイプされたり、傷付けられて、正気で居られる男はいないからね。総長が冷静さを失った族は、ガタガタと音を立てて崩壊し出すわけ。」
「レ……イプ……?」
その言葉に思わず息を呑む。
「そんなのこの黒い世界じゃ日常茶飯事の事よ。自分からこの世界に足を踏み込んだくせに、何今更青くなってんのよ。」
聖也さんが、あたしを鼻で笑う。
悔しい……。
悔しいけどあたしは確かに甘かったんだと思う。
潤を取り戻したい一心で、この世界に飛び込んだ。
だけど、あたしの覚悟なんて想像の範囲だけのもの。
多少の怪我や傷付く事は覚悟出来ていた。
だけど、レイプって……。
そんなのが、こんな身近な所で起こってるなんて想像すらしていなかった。
そうか。
そういえば、百合さんだって太一に出会った時に危ない目にあったんだった。
百合さんは、太一の彼女になる時にその覚悟さえもしたんだろうか……。



