あたしが、キョトンとしながら二人の話を聞いていると、百合さんがあたしに耳打ちをする。


「聖也ってのはね、うちと同盟を組んでる"聖蘭(せいらん)"っていう暴走族の総長だよ。
聖蘭は主に情報屋みたいな事やってんの。」


「情報屋?」


「うん。この近辺の事なら聖蘭は何でも知ってる。」


「……へぇ。」


心臓が大きく跳ねる。


何でも?


もしかして、あたしの事も?


「まぁ、でもタダで情報が貰えるわけじゃないの。こっちが提示した情報をこっちの何かと引き換えに貰う。」


「何かと引き換えに?」


「そうなの。そこが聖ちゃんの厄介なところでねぇ……。まぁ、その内会う事もあるだろうから、会えば分かるよ。」


「???」


厄介って何だろう?


百合さんが"聖ちゃん"て呼ぶくらいだから、仲はいいんだろうけど。


でも、こっちが提示した情報しか売らないのなら、煌龍に疑われない限りは、あたしが鷹牙のスパイだとバレる恐れはなさそうだ。


良かった……。


あたしは、ほっと胸を撫で下ろす。


「新しいグループって、うちの縄張りに湧いて出来たやつ?」


春馬が、テーブルの上にあったお菓子の袋を開けながら恭に聞く。