漆黒の闇に、偽りの華を


「ひっ!」


「大丈夫。」


あたしが怖くなって悲鳴をあげそうになると、恭の左手が恭の腰を掴むあたしの左手を取る。


そして、恭のお腹の方までその手を引っ張られ、恭に抱き付くような形になる。


「もっとくっついてて。大丈夫。怖くない。」


そう言って、あたしの手の上に恭の手が重なる。



……あ。


また、この感覚。



恭の"大丈夫"は、瞬く間にあたしの不安を吹き飛ばす。


その瞬間、あたしの中に温かい風が流れ込んできて、くすぐったいような、心地いいような、そんな感覚に囚われるんだ。



大丈夫。


あたしは、大丈夫だ。



恭の背中に顔を埋め、胸いっぱいに初夏の夜の香りを吸い込んだ。