「ほんまいつもごめんなさい。ちょっと、ボーっとしてて。」
私は、サングラスの奥の瞳を見つけてしまう。
目が合うと、また私は目をそらす。
「買い出しは別にええけど。一人で海なんか眺めてるから、心配するやんけ… 元気ないんか?」
またサングラスを頭の上に乗っけて、今度は砂の上にしゃがみ込んだ。
立ち上がってしまった私は、もう一度座ろうか、このまま立っていようか、悩んでしまう。
「翔太さん、海好きですか?」
突っ立ったまま、私は彼に尋ねた。
海の家にバイトに来ている人に向かって、今の質問はおかしいよね。
「めっちゃ好き。もうこのままここから離れたくないなぁ。」
体育座りをして、ちょっと上目遣いに海を見つめる。
彼の名前は、翔太。
夏休みの間、一ヶ月だけバイトに来たこの海の家で出会った男の人。
もう夏休みも折り返し地点。
私は、この夏・・・
このコバルトブルーの海で、恋をした。