私は、何度も振り向きながら歩く。



だんだん遠くなる翔太さんの背中を見つめると、胸が苦しくなる。




「瑠奈、あんた翔太のこと好きなんでしょ!」


一つ年上で、一緒の時期にバイトを始めた里香が、私の耳元で囁いた。



「え・・・なんで?」



私の質問に、里香は大笑いした。



「ここのバイトの女の子、みんな彼氏持ちだから良かったね。ここでライバルにはなりたくないもんね。」



里香は、東京からバイトに来ていて、私の知らないことをいっぱい知っていた。


お洒落で、器用で、人付き合いもうまくて、憧れる女性だった。



「そうなの?誰も翔太さんのこと好きじゃないかな?」




私は、里香に体を摺り寄せて、聞いた。



「やっぱ、あんた好きなんじゃん!頑張りなよ。あと2週間。応援してるから!」




里香だって、翔太さんの薬指の指輪には気付いているはずだ。


でも、応援するって言ってくれた。


それが嬉しかった。



彼女いるんだから、あきらめなよ…なんて言われても、私には無理だから。