「なぁ、だからなん…」 「沙奈に、何を言おうとしたの」 静かではあるが鋭い口調で伊藤が言った。 その声はいつもとは違い、威圧を与えるような、低く暗いものだった。 その雰囲気に一瞬戸惑い、言葉につまる。 「…え、っと、桂木のお姉さんってモデルなのかなって…聞こうと」 そう。 あの雑誌に写っていたのは桂木のお姉さんだったのだ。 一回見たきりだが、きっとそうだと思う。 俺がそう答えると、伊藤はあからさまに眉をひそめた。 「榎本、もう二度と沙奈にあの人の話しをしないで」 「…え?」