「おかえり、幸久。鏡華ちゃんもいらっしゃい」 「あ、お久しぶりです!」 ショーケースの内側に立つ、優しそうな顔立ちの女の人。 工藤くんのお母さん。 何度かお邪魔するうちにすっかり打ち解けた。 工藤くん本人よりもお母さんの方が話しやすい。 「ちょうどよかった、新作の味見してくれる?」 「はい、ぜひ」 外は大雨。 私が傘を忘れたことを察したのだろう、お皿と一緒に大きな和傘を持ってきてくれた。 竹ようじを手にとって、桃色の大福のようなものを割る。 中からトロリと蜜色の液体が流れ出た。