君だから〜たった一人の君〜


「まあ、」


少しだけ気まずくなって、目を逸らした。


また口を開こうとする麗香。


なに、言われるんやろ…。


「悪いけど、俺ら急いでんねん。ほなな」


「へっ?」


そう言ってまた亜倖の腕を掴んで、歩き出す。


「あ…ッ」


立ち尽くす麗香を振り返った。


それは、悲しい顔をしていた。







亮に引っ張られて、亮の家に連れていかれた。


グレーの高層マンション。


亮の家はその最上階だった。


無言で過ごしたエレベーターを降りて、廊下を歩く。