oneself 前編

哲平が気がかりなまま、ようやく携帯を耳から離したあたしを見た先輩は、その場に佇むあたしの腕を引いた。


「ほら、早く!」


「あ、はい…」


先輩の声で気を取り直したあたしは、駆け足で奈美の元へと向かう。


急いで向かった先には…


頬を押さえて黙り込む奈美の姿と、殴ったであろう女の先輩を取り押さえる、数人の先輩達の姿。


「奈美!」


あたしは想像以上の展開にびっくりしながらも、奈美に駆け寄った。


「どうしたん?何があったん?」


「未来…」


あたしの顔を見て、名前を呼んだ瞬間に、張り詰めていた糸が切れたように、奈美は泣き出した。


「奈美…」


奈美の肩を抱くあたしにも向けられる、女の先輩の攻撃的な視線に、戸惑いを隠せない。


一体何があったんだろう?