oneself 前編

「未来ちゃん、何してんの?」


後ろからあたしを呼ぶ声に振り返ると、そこには酔っぱらったサークルの先輩の姿。


「あ、電話してます。すぐ戻るんで」


「早く戻って来てや、未来ちゃんおらな淋しいし~」


馬鹿でかい声で叫ぶ先輩。


哲平に聞こえたら誤解される…


あたしはハラハラしながらも、先輩を手で追いやると、もう1度受話器に耳を集中させる。


「もしもし、ごめん…」


「なぁ未来、今日会われへん?」


さっきの会話が聞こえている風でもない哲平は、唐突にそう言った。


「え、今日?」


「今からそっち抜けて、俺のとこ来られへん?」


何で?


明日は普通に会う約束してるよね?


あたしはいきなりの哲平の言葉に困惑しながらも、少し考えた。


こんな事を哲平が言うのは、初めての事で。


何だか元気のない哲平を、心配する気持ちもあった。


「いきなりどうしたん?」