oneself 前編

「てか未来さ、悩んでたのはもういいの？」


香は話題を変えるべく、明るく尋ねてくる。


「うーん、あたしももうちょっと大人っぽくなりたいとは思うけどな～」


それは本当に、今日二人に会う前から思っていた事だった。


この前のサークルの飲み会の日、あたしは周りの先輩達から、よってたかって子供っぽいと言われ続けた。


奈美だって童顔で、服装はあたしとさほど変わらない。


けれど、彼女の持つ生まれながらの少女っぽさとは違い、要するにあたしは、小学生の男の子みたいな感じなのだ。


「それならさ、ちょっとイメチェンしてみたら？」


香の唐突な返しに、あたしは戸惑った。


あたしに、今日の香のような大人っぽい洋服が、果たして似合うのだろうか。


香はそんなあたしはおかまいなしに、話し続ける。


「あたしもさ、最初は見栄やったけど、今では楽しいで？やっぱりさ、綺麗になりたいって思うしさ。それにな、やっぱり自分に自信もついたし」


綺麗になりたい。


自分に自信を持ちたい。


誰だって願う事を、香はいとも簡単に口にした。