oneself 前編

それから午後の授業を終え、あたしはテキストやノートを鞄に突っ込んで、足早に学校を後にしようとしていた。


「そんなに急いでどうしたん?」


不思議そうにする奈美を横目に、あたしは時計をチラリと見る。


「彼氏と会うねん!」


「平日やのに?」


「うん、今日は残業がないみたいやし、先週は会えんかったからさ」


それは、今日のお昼のメールで、初めて分かった事だった。


週末までは、会えないと思っていたのに。


哲平の方から、会いたいと言ってくれた。


当たり前のように毎日会える事も幸せだけど、こんな風に突然会える事も、幸せな事だと思った。


だって哲平があたしに会いたいと思ってくれた事、それを愛情として、感じられるから。


「楽しんでおいで〜」


笑顔で手を振る奈美に、あたしも笑顔で答える。


「うん!」