oneself 前編

「かっこいいって言ってた先輩はどうなんさ?」


「あ〜、彼女いるねんて」


カフェオレのストローを指ではじきながら、奈美はピクリとも表情を変えずに答えた。


「そっか〜」


「ん、でも上手くいってないみたいやし。まだチャンスはあるやん?」


そう言って笑った奈美に、ドキッとする。


奈美はそんなにも、先輩の事が好きなんだろうか。


彼女がいても、すごく好きで、諦められないなら、仕方のない事だけど。


でもさっきの笑った顔からは、そうは思えなかった。


いつもの奈美とは、違う人のように思えた。


ブーッ、ブーッ…


「未来は幸せそうやな〜」


そう言って、携帯を開くあたしを見つめて笑う奈美は、もういつもの笑顔に戻っていた。


あたしの気のせいかな…