oneself 前編

翼に打ち明けた事で、自分の状況が改めてやばいんだと気付いた。


バイトしなきゃ…


何度も気付かされた機会はあった。


でもそう思うだけで、行動に移さなかったあたし。


どこまで駄目な人間なんだろう。


自分の馬鹿さ加減と、もう間に合う事のない状況に、唇を噛み締めた。


その時、そんなあたしを心配そうに見つめる翼が、口を開いた。


「未来ちゃんが抵抗なければ、体入とかしてみたら?」


「タイ…ニュウ…?」


耳慣れない言葉だった。


キョトンとするあたしに、翼はクスッと笑う。


「体入っていうのは、体験入店の略で〜」


体験入店とは、読んで字のごとく、体験で入店してみる事。


夜の仕事が初めての子、はたまた経験者の子でも、お店の雰囲気を知る為に、ある制度だという。


「もちろんその日に給料は貰えるよ。時給は2800円の、だいたい5、6時間だから…」


指を折りながら説明する翼は、携帯を取り出すと、素早く何かを打ち込んだ。


「16800円、6時間ならね」


少し誇らし気な翼と、その金額に、驚きを隠せないあたし。


16800円…


たった1日で。


しかも、その日に給料は貰えるという。


考えた事もなかった。


あたしがそんな仕事をするだなんて…