oneself 前編

「でもじゃあ寝んと学校来てんの?しんどくないん?」


そう尋ねるあたしに、翼は笑いながら、丁寧に仕事が終わる時間や、帰りは送りがある事などを教えてくれた。


「3時頃には帰って来れるし、入ってるのは週4だから、普通に寝れてるよ」


気付けばあたしは、仕事の内容や、給料がどれくらいもらえるのかなど、翼を質問攻めにしていた。


自分の中で、あれほど哲平とあたしを悩ます存在だった、夜の仕事。


哲平は知っている世界。


遠藤さんも知っている世界。


そして、翼も知っている世界に、あたしは興味を示し始めていた。


翼の説明を聞きながら、うんうんと熱心に頷くあたし。


何より魅力的だったのは、やはり給料の面だった。


「時給は最低でも2800円からで、それが日払いで貰えるんだ。あたしは家賃がやばくて悩んでたから、それが決めた理由かな」


へえ〜っと驚くあたしに、翼は首をかしげて聞いてきた。


「未来ちゃんって、何かバイトしてるの?」


「してへん…」


「え〜!じゃあ貯金とかあるの?」


もっともな質問だと思った。


あたしが実家住まいだという事は、翼も知っている。


それでも高校時代よりも、出費の多い今。


この前、バスケ部の子達と集まった時も、「お金が欲しい」という言葉を何回耳にしたか。


そう、それくらい今のあたし達には、欲しい物が沢山あって。


新しい洋服や化粧品を次から次へと買える子の、お金の事情は、気になるものだった。