ハッと顔を上げると、あたしの返事を聞く前に、その声の主は隣に腰をおろした。


「あたしも介護福祉科なんだ!」


そう言って、彼女は人懐っこい笑顔で微笑んだ。


あたしはそんなに社交的な性格ではないし、ここでは奈美以外の人とは滅多に話す事はない。


彼女にしても、同じ学科とは言え、今まで全く話した事はないのに。


驚くあたしをよそに、彼女は買ってきたおにぎりとパンを膝の上に広げ出す。


でも、彼女の存在は知っていた。


スラリと長身で細身、涼しげな美人顔。


クルクルの巻き髪。


露出の多い服。


ブランド物のバッグ。


あたしの通う介護福祉科では、珍しいタイプだった。


「いつも一緒にいる友達は?」


おにぎりをほおばりながら、彼女が聞いてくる。


「今日は休みみたい」


「ふ〜ん、風邪か何か?」


口元についたシーチキンを拭いながら、彼女は鞄の中からペットボトルのお茶を取り出した。


このバッグ…


一体いくらするんだろう?


自分で買ったのかな?