oneself 前編

「ああ、これな…」


そう言って手を広げ、爪を眺めながら、今度は香がため息を漏らす。


そういえば、今日は香の方から話があるという事で、連絡があったんだ。


「何かあった?」


「ん~…」


ストローを指ではじきながら、香はゆっくりと話しだす。


「前に気になってる人おるって言ってたやろ?」


買い物に付き合ってもらい、香の家で髪の毛を巻いてもらった日、嬉しそうに話していた香を思い出す。


「それがさ…」


その彼とは、その後も二人で遊びに行ったりと、順調な付き合いだったという。


「付き合おうって言葉はなかったけど、お互い好きって事は言いあってたねんで?」


あいかわらず、もてあました手でストローをはじく香。


「でも、彼女おってん…」


「えっ?」


あたしは香の手から顔に視線を移し、目を見開いた。


香はフーッとまたしてもため息を漏らすと、それ以上何も言わなかった。


奈美と同じ状況の香。


あたしはこんな時、何て言えばいいんだろう?