oneself 前編

前々から行きたいカフェがあったと言う香について行き、そこで話す事に。


「あたしこれ!」


お店に着くなり、さっそくメニューを開き、当店お薦めと書かれたケーキセットを指差す香。


よっぽど来たかったんだと思わず吹き出すあたしは、その香の指先を見て、どこか違和感を感じた。


「じゃああたしはこれ!」


注文を済まし、携帯を開く。


今日はまだ、哲平からの連絡はない。


今日は同伴はないんだ。


少しだけホッとし、香の方に目をやると、そんなあたしの姿を、香は心配そうに見つめていた。


「どうしたん?」


「幸子から聞いた」


そう言ってなおも表情を曇らせる香が、哲平の事を言っている事はすぐに分かった。


「ごめん、何か言うタイミングなくて…」


それは本心だった。


あたしにとっては、香も幸子も、同じくらい大切な友達で。


隠すつもりもなかったし、機会があれば話そうと思っていた。


ただ昔のように、学校へ行けば顔を合わす訳でもなくて。


話の内容も内容だけに、どうやって切り出せば良いのか分からないまま、今日に至っていた。