oneself 前編

初めて間近で見た事、初めて言葉を交わした事。


それから夏休み中の部活では、彼の姿を目で追う毎日。


憧れが確かな思いに変わるまでは、そんなに時間はかからなかった。


同じ学校の制服を着た子がたまたま目の前にいて。


あまりにも長い時間悩んでいたから。


ただそれだけの事。


だから彼が、あたしの存在など知るはずもなく、それ以降は目が合う事も、話す事もないまま、長い長い夏休みは終わった。


それでも夏休みの間に、部活を通して、彼の姿を目にするだけでも、その頃のあたしは、幸せだったっけ。