oneself 前編

それなのに、哲平の口から出た言葉は…


「ごめん。未来には悪いと思ってるけど、もう決めたから」


頭が真っ白になった。


哲平は、何を言ってるの?


膝の上で握り締めた拳を見つめながら、あたしは必死で考えた。


どう言えば、あたしの気持ちが伝わるんだろう。


どうしたら、哲平は考え直してくれるんだろう。


この3週間、哲平がホストを辞めてからの幸せな未来だけを思って、過ごしてきたのに。


その時、あたしの手の甲に、ポタポタと涙の滴が落ちた。


それを見た途端、あたしの中の我慢していたものが一気に溢れ出した。


「もうしんどい…」


溢れてくるものを拭う事もせず、嗚咽をあげながら、感情的に泣いた。


その反面、頭の片隅に浮かぶ、期待を込めた思い。


こんな風に泣かれたら、哲平は困るでしょう?


早くあたしの隣に来て。


そっと抱きしめて。


もうこれ以上、あたしが悲しむ事はしないって言ってよ…