oneself 前編

帰り道。


電車に揺られながら、あたしは頭の中をグルグル回る、嫌な妄想を振り払うように、大きく頭を振った。


哲平と腕を組んでいた、綺麗なお客さん。


キャバクラで働き始めて、昔より綺麗になったという遠藤さん。


あたしは?


まだまだ駄目だ。


あたしは最近、自分がイイ女になったような勘違いをしていた。


でも、全然足りない。


もっともっと頑張らなくちゃ。


あんな人達に囲まれて仕事をしている哲平に、あたしが1番だと思ってもらう為に…


そして、それに伴う足りないもの。


携帯代の事はもちろん。


ブランド物のバッグだって欲しい。


ネイルサロンにもまた行かなきゃ。


お金だ。


お金が足りない。


今のあたしには…