oneself 前編

みんなは興味津々で、その話を続ける。


たまたまミナミで遊んでいた時に、中年男性と腕を組んで歩く遠藤さんを見かけたという木部ちゃん。


彼女は変な誤解をされたくなかったからか、わざわざ木部ちゃんの元へ来て、キャバクラで働いている事を打ち明けたという。


「でもさ、昔から綺麗な子やったけど、もっと綺麗になってたわ!鞄もブランドのやつやったし!」


羨ましそうに、ため息を漏らす木部ちゃん。


「やっぱりそういうとこって稼げるんや〜」


「あたしもバッグ欲しい〜」


みんなが遠藤さんの話に夢中の中、あたしは一人、考えていた。


もし遠藤さんが、今の哲平に出会ったら…


今日のあの光景が、遠藤さんと哲平にすりかわる。


あたしは周りに気付かれないよう、時折軽く相槌を打ちながら、でも頭の中は、不安でいっぱいだった。


狭いミナミの中。


どうか哲平と遠藤さんが、出会いませんように…