oneself 前編

「遠藤さんっておったやん?覚えてる?」


周りはうんうんと頷く。


遠藤さんは、高校時代の同級生で、学年でも1位、2位を争う、ギャルだった。


しかも哲平と同じクラスで、哲平の事を好きだった。


付き合った当時、すれ違いざまに嫌味を言われたのを覚えている。


でも、スラリと細くて、美人な子だった。


「あの人、今キャバクラで働いてんねんて!」


目をパチクリさせながらそう言った木部ちゃんの言葉に、周りは一斉に声を上げた。


「え~、マジで~!」


信じられないという顔のみんな。


あたしはそれをチラリと見ながら、合わせて驚いた表情を作った。


やっぱりみんなからしたら、そんな世界なんて自分には縁のない話だし、びっくりするんだ。


もちろんあたしだって、哲平の事がなければ、みんなと同じ反応をすると思うけど。


哲平の事を、話さなくて良かった。