oneself 前編

そんな中、いつも通り10時頃に帰ったあたしを、お母さんが渋い顔で、リビングで待っていた。


最近帰りの遅いあたしを、両親が快く思ってないのは、薄々感じている。


「ただいま」


気まずい雰囲気の中、そう言ったあたしに、お母さんは1通の封筒を差し出した。


請求書在中


そう書かれた、ドコモからの手紙。


「へっ?」


訳が分からないあたしは、首をかしげて、お母さんを見る。


「遊んでばっかりいるんやし、携帯代くらい自分で払ってよ」


「え、何で?」


「何でって…」


呆れ顔でため息を吐くお母さん。


「お姉ちゃんも高校卒業してからは、自分で払ってやるし。外食ばっかりするお金はあるんやろ?」


そう、お母さんの1番の怒りは、あたしが家で夕食を食べない事。


最初のうちは、「今日はいらない」と、電話を入れていた。


それでも続くと、小言を言われる事が面倒臭くなったあたしは、いつのまにか連絡をしないようになっていた。