oneself 前編

あれから数日後。


バイトは未だに決まっていないまま、カードの利用金額だけが増えていた。


たまたま奈美が美容院に行くと言ったので、あたしもプリン頭になってきた自分の生え際を見て、そろそろ行かなきゃいけない頃だと思った。


幸子に誘われて家電量販店に行った際に、デジカメが欲しいと言う幸子につられて、あたしも衝動的にデジカメを購入した。


4万5千円ほどの出費は痛かったけど、でもどちらも必要な出費。


決して無駄ではない。


バイトはというと、電話したうちの何件かは、もう募集を締め切ったと言われた。


1つ面接に向かった先では、終電までしか働けないというこちらの希望に、渋い顔をされた。


そこからの返事はまだないけれど、きっと駄目だろうと思う。


また探さなきゃな。


始めてのバイト探しは意外と簡単ではなくて、少しだけ焦る気持ちはあったけれど、まだ大丈夫、という、変な安心感をあたしは持っていた。


欲しい物を手に入れられる自分。


そして綺麗になっていく自分。


そんな事に夢中で、あたしは大切な事が、見えなくなっていた。