oneself 前編

急に止まったタクシーにチラリと目をやると、勢い良く後部座席のドアが開いた。


えっ?


何?


驚きを隠せない心臓が、ドキドキと音をたてる。


「未来、乗って!」


その中から聞こえた声。


後部座席には哲平の姿。


「えっ、何でタクシーなん?」


ホッと胸を撫でおろしながら、のんきな声を上げるあたしに、哲平はすかさず言った。


「とりあえず乗って!」


訳が分からないまま、哲平に急かされて、あたしはタクシーに乗り込んだ。


パタンと閉まるドアの音を確認してから、哲平は運転手に告げた。


「さっき言った所まで、行ってもらえますか?」


「はい」と静かに応えた運転手は、ゆっくりと車を走らせた。