スーッ…、スーッ…


あたしの頭の上から聞こえてくる、哲平の息遣い。


え?


あたしはゆっくりと哲平を押しのけて、自由になった体を起こした。


そこには、疲れきった様子で、寝息をたてる哲平の姿があった。


こんな事って、本当にあるんだ。


疲れてるんだよね。


慣れないお酒を飲んで、月曜から今日のついさっきまで、働いてたんだもんね。


分かってるけど。


分かってあげたいけど…


これじゃ一緒にいる意味がないよ。


あたしは哲平にそっと布団をかけると、音を立てないように、ゆっくりと哲平の部屋を後にした。


ガチャン…


玄関の扉が閉まる音が、あたしと哲平の距離を示すように、虚しい音を響かせていた。


5月の少し暖かい日差しの中、あたしはついさっき来た道を、また戻った。