oneself 前編

「起きてたで。哲平も終わったん?」


「ん~」


こんな時間に電話で話すのは、本当に久しぶりで。


きっと明日の時間の事だよね?


疲れてるのに、わざわざ電話してきてくれたんだよね?


そんなあたしの気分を一気に落とすように、哲平は普段より少し低い声で言った。


「ごめん、明日夕方くらいからしか無理やねん」


「え?」


電話越しに伝わる、哲平の気まずそうな空気。


「人が足らんくて、2部も出る事なった」


後ろで聞こえる、騒がしい音楽。


まだお店は閉店してないんだろうか。


「また連絡するわ、ホンマにごめん!」


本当に申し訳なさそうに。


でも、哲平は早口でそう言うと、あたしの返事を聞くまでもなく、一方的に電話を切った。


ツーッ…、ツーッ…


あたしはその無機質な電子音を、理解出来ずに。


ただぼんやりと聞いていた。