oneself 前編

「お疲れ様で~す」


お店を後にして、駅へと向かう。


「未来、富田先輩とイイ感じやん」


隣でニヤけながら、奈美があたしをつつく。


「え、別にそんなんちゃうやん」


「ふ~ん」


なおもニヤけ顔の奈美だったが、それ以上は何も言わなかった。


二人で、駅までの道のりを無言で歩く。


時折よろける奈美は、そうとう酔っているようだった。


もうすぐ駅に着くという時だった。


「てかさ、未来何か悩んでるやろ?」


「え?」


突然の言葉に戸惑いながらも、何と言おうか考えていた。


でも、そんなあたしの思考回路を断ち切るように、奈美は冷めた声で言った。


「男なんてさ、浮気する生き物やし、本気になるだけ損やで」