oneself 前編

「あ、そうや、結局ホストの件に関して、あんま喋ってないやん!」


帰り際、思いだしたように叫ぶ幸子。


「ん、でも先輩に助けてて言われてんのもあるし、もう決まった事やし、とりあえず今は耐えるしかないかな」


そう力無く笑うあたし。


「でもホストなんて、あたしは反対やから。一刻も早く辞めてもらいや。それが無理なら、そんな未来の事泣かす哲平なんか、あたしは嫌いやから」


哲平の気持ちは同じ社会人として、あたし以上に理解している幸子。


それでも、あたしの親友であり、哲平とも友達な幸子。


そんな幸子の言葉が、死ぬほど嬉しかった。


「ありがと」


哲平に嫌な思いをさせたかも知れない。


でも、ホストって職業を選んだ事は、やっぱりあたしも戸惑っていた。


あたしの存在は、どうでもいいの?


あたしが不安になる事を、分かってくれないの?


正直、そう思わずにはいられなかった。


また今度、哲平にその思いを伝えよう。