oneself 前編

「例えばさ、あいつ金曜はバイト入ってるねん」


それも哲平から聞いていた。


家庭教師のバイト。


徹にそんな事が出来るのか、と思ったが、相手は小学生らしい。


「だから金曜は会われへんし。で、土曜はサークルの飲み会やろ」


サークルの飲み会。


あたしもそれで、哲平と会わない日もあった。


「そんで日曜日に徹は二日酔いでさ。夕方くらいから会うねんけど、あたしは次の日仕事やん?」


幸子は小さな印刷会社の事務をしていた。


だから仕事は、土日が休み。


「徹は月曜は2限からやし大丈夫なんかもしれんけど、あたしは違うやん。平日に会う時もそうやけどさ。そんな時、未来ならどうする?」


「え?」


あたしならどうする?


哲平と会えるのが、その限られた時間なんだったら…


あたしは少しでも長くいたいと思う。