oneself 前編

「はぁ~?ホスト~?」


やって来た中華料理屋の店内に、幸子の声が響く。


「ちょ、声でかいって」


人差し指を口の前に立てるあたしに、幸子は軽く肩をすくめながら、目の前のウーロン茶に手を伸ばした。


それをゴクリと飲みこみ、あたしを見つめる。


「ホンマに言うてんの?」


信じられないというような幸子の視線。


嘘だったら、あたしが一番嬉しいよ。


あたしは無言で、視線と頭をもたげた。


頭上で幸子のため息が聞こえる。


やっぱりこんな事、言わない方が良かったのかな?


でも遅かれ早かれ、徹を通してバレそうだし。


隠しておくなんて、無理だよ。


でも、反応は怖いけど、あたしは誰かに、話しを聞いて欲しかったんだ。