oneself 前編

月曜日、あたしは少しでも考える時間を作りたくなくて、久しぶりに幸子と会う約束をした。


あたしは学校帰り、幸子は仕事帰りという事で、皮肉にもミナミで待ち合わせる事になった。


哲平は今頃、初出勤の準備をしてるんだろうか。


「お〜い、未来!」


携帯を片手に、あたしの姿を見つけた幸子が叫ぶ。


「ごめん、待った?」


「いや、あたしもさっき着いたとこやで」


そう言いながら幸子は二つ折りの携帯をパチンとたたみ、鞄に直した。


「大学慣れた?」


急に誘った事と、どこか浮かない顔のあたしから何かを察したのか、幸子は心配そうな顔であたしを見つめた。


哲平の事を話したら、幸子は何て言うだろう。


「うん、大学は楽しいで」


「そっか」


きっと勘の良い幸子は、今の言葉で、あたしの悩みが分かったんだろう。


「ちょっと早いけど、ご飯食べに行こっか」


「うん」