oneself 前編

「ホンマは周りと同じように大学に進みたかった。でもあいつは家の事情で就職の道を選びよった」


幼い頃に事故で父親を亡くした哲平。


その後は母親と二人暮らしで。


「オカンに楽さしたりたいねん」


そんな台詞を、あたしは何度も聞いた。


だからそれが、哲平の選んだ道なんだと思ってた。


本当は進路の事で悩んでたんだ。


「あいつな…」


先輩は昨日の哲平の様子を、ゆっくりと話してくれた。


毎日毎日、同じ仕事の繰り返し。


小言を言われたり、怒鳴られたりの日々。


進学した、楽しそうな友達。


正直周りが羨ましかった事。


そしてあたしへの思い。