oneself 前編

「未来ちゃんさ、あいつの不安な気持ち聞いた?」


先輩が遠慮がちにあたしに尋ねる。


「あ、はい…」


きっと哲平は先輩にも、自分の正直な気持ちを話したんだろうな。


実際、昨日の晩に連絡がつかなくかった時、先輩は隣にいたんだし。


でもそれだけ、哲平の不安な気持ちは、切実だったんだ。


高校時代、あたしは何かある度に、幸子や香に相談していた。


不安になるのも、悩むのも、泣いたりするのも、あたしばっかりで。


哲平があたしにそんな気持ちになって、友達に相談するなんて、きっとなかったはず。


それだけあの頃は、あたしの気持ちばっかりが大きかった気がする。


「あいつがさ、どこまで未来ちゃんに話したんか知らんけど」


先輩は少し考えながら、短くなった煙草を灰皿に押し付けた。


「あいつがホンマは大学に行きたかったん、未来ちゃんは知ってる?」


「えっ?」


目を見開いて驚くあたしを見て、先輩はまた苦い表情で笑った。