oneself 前編

先輩の吐き出す白い煙を眺めながら、あたしは何から伝えていいのか分からずに、ただ黙っていた。


「まずさ、いきなりすぎるよな?」


そんなあたしに気遣ってか、先輩はあたしが答えやすい質問を投げかける。


「そうですね」


先輩とは対照的に、低い声で答えるあたしに、先輩は苦笑いをする。


「それはさ、俺が悪いねん。とりあえず面接だけでも来いって、今日に無理矢理来さしたんは、俺やから」


申し訳なさそうに「ゴメンな」と謝る先輩を、あたしは何も言えずに見つめた。


それから先輩は、自分が今主任という役職に就いている事。


急にスタッフが辞めてしまって困っている事。


オーナーから早く新人を見つけてこいと急かされている事を、あたしに説明した。


そして昨日、哲平にも同じように事情を話し、助けて欲しいと頭を下げた事も明かした。


「俺は昨日あいつに出会ってな、こいつしかおらんと思ってん」


せっかく入った新人も、一日で来なくなる事も少なくないらしい。


そんな先輩の猛烈なアプローチに、それでも哲平は迷っていた。


それは、あたしの事があるから。