oneself 前編

「てか、未来ちゃん見過ぎ…」


あまりにぼんやりとしていた為に、先輩に言われてハッとする。


「ごめんなさい」


「いや、別にいいけどさ」


そう言って先輩はニコッと笑って見せた。


その笑顔は本当に魅力的で。


これがホストの技なのかな、なんて思った。


「あのさ、仕事の事、ホンマは嫌やろ?」


「えっ…」


答えに困るあたし。


先輩は笑いながら、さっきと同じようにニコッと笑って、ゆっくりと話しだした。


「別に隠さんでいいよ。不安やし、心配やろ?むしろそれは、当たり前の事やと思うし。だからこそ今日に未来ちゃんも連れておいでって、あいつに言うたんやから」


そう言って、テーブルの上に置かれた煙草に手を伸ばした先輩は、あたしに一言断って、くわえた煙草に火をつけた。


正直、納得なんてしていない。


あたしの気持ちが追い付かないまま、いきなりこんな状況になってるんだもの。


ただ、今までの事、昨日の事、そんなうしろめたさから、簡単に嫌だとは言えなくて。


でもあたしが今日ここに来たからって、それは変わるのだろうか?