oneself 前編

「俺な、仕事辞めるわ」


その言葉を口にした哲平は、すごく真剣なまなざしで。


もうその意思は、固いのだと思った。


これからどうするの?


そうは思ったが、さっきの話を聞いて、あたしは引きとめる事は出来なかった。


哲平の性格を知っているから。


勉強も部活も、掃除の時間だって、真面目だった哲平。


だからきっと仕事も、一生懸命頑張ったはず。


先輩からも後輩からも、先生にだって愛されていた哲平。


だからきっと上司とも、うまくいくように頑張ったはず。


簡単に嫌になって、投げ出すような人じゃないから、哲平は。


「そっか、仕方ないな」


そう言ったあたしを見て、少しだけ安心したような表情を見せた哲平は、運ばれてきたアイスコーヒーを、一気に飲みほした。


「そんでな」


もう一度真剣な顔つきで、あたしを見つめる哲平。


「うん」


「今から話す事は、ホンマにびっくりさせると思うけど」


「え?」