oneself 前編

哲平の話によると、その上司と同期の北川君との三人で、いつも同じラインに入っていて。


仕事を教えてくれないくせに、ヒステリックな上司に、ついに北川君が切れてしまったと言う。


上司に殴りかかろうとして、胸倉を掴んだ北川君。


それを必死で止めた哲平に、上司がよろけてしまって、腰を強く打ったらしい。


「え?そんなん哲平悪くないやん…」


あたしの納得出来ない表情を見て、哲平は力なく笑った。


「でもな、もうええねん。どんなけ言うたって、上司は上司やしさ。何か難しい人やねん」


それから哲平は、今までにあった上司との出来事を、思い出すように話し出した。


「何なんその人、最悪やん!」


話を聞いて憤慨するあたし。


そんなあたしを見て、哲平はふっと笑う。


「やっぱ未来に聞いてもらうだけで、俺はもうちょっと頑張れたかも知れんな」


その笑顔は、ひどく淋し気だった。


そして真剣な顔をして、あたしの顔をじーっと見つめた。


「あんな、今から話す事びっくりするかも知れんけど…」


「ん?」