oneself 前編

「ああ、もうそれはいいよ、分かったし」


そう言う割には、どこか歯切れの悪い哲平。


こんな事で、哲平との仲がこじれてしまうなんて嫌だよ。


あたしが悪かったところは、ちゃんと反省するから。


思ってる事があるなら、ちゃんと言って欲しい。


不安になるあたしに、哲平は小さなため息をついてから、ゆっくりと口を開いた。


「あんな、俺な、最近ホンマに仕事の事で悩んでてん」


4月に入ってから、仕事を始めた哲平。


基本は5時半で終わり、土日は休みのはずが、残業や休日出勤も多かった。


哲平が疲れている事は、日々の連絡の中でも伝わってきた。


それに加えて、上司との仲が良くない事。


それの不満も、哲平は漏らしていた。


あたしは小さく相槌を打ちながら、哲平の話を聞いていた。


「そんでな、昨日な、上司とちょっと揉めてん…」


「え?」