oneself 前編

約束の時間5分前に、ツタヤに着いた。


「未来」


すでに着いていた哲平が、お店の前であたしに手を振る。


「何か見たい物でもあるん?」


そう問いかけたあたしに、哲平は気まずそうな顔で答える。


「とりあえず、あそこ入ろ」


そう言って指さすのは、ツタヤから少し離れた喫茶店だった。


「うん」


来たばっかりで、いきなりお店に入るの?


そう思ったけど、口には出さない。


とりあえず今日は、哲平に付き合うんだ。


そして無言で歩きだす哲平に、あたしはついて行った。


哲平の様子が、いつもと違う。


電話の時も、会ってからも、哲平はどこかよそよそしい感じで。


それはまだあたしに怒っているからなのか、また別の理由があるのかは、その時のあたしは知るはずもなくて。


喫茶店に着き、飲み物の注文を済ませたあたしは、もう一度哲平に謝った。


「昨日はホンマにごめんなさい」