oneself 前編

一通り話し終えたあたしに、哲平は納得してくれたのか、「そっか、疑ってごめんな」とだけ言って、今日の会う場所と時間を指定してきた。


それは、ミナミの戎橋近くにあるツタヤだった。


何か買いたい物でもあるのかな。


少し不思議に思ったけど、あたしは自分のした事を許してくれた哲平に対して、今日は哲平に付き合おうという気持ちで、「分かった」とだけ返事をして、電話を切った。


哲平の声は、最後まで低いままだった。


そういえば、仕事の話を聞いていない。


それが原因かな?


そんな事を考えながら、準備を済ませ、ミナミまで向かった。


その後に待ち受ける事実を、あたしは何も知らないで。


ただただのんきに、念入りにメイクをして、髪の毛をセットして、哲平に会える事を楽しみにしていた。


ねぇ、あたしはそこまで、哲平を苦しめたのかな?


一晩の間に哲平が決意した事は、あたしがあの時会いに行ってれば、何か変わってたの?


この一ケ月間に、あたしに思いやりがあれば、こんな風にはならなかったの?


やっぱり嫌な夢に限って、正夢になるんだ…