oneself 前編

ブーッ、ブーッ…


送ってすぐに、床の上の携帯が震える。


それを拾って確認すると、”着信 哲平”の文字。


あたしは気持ちを落ち着かせながら、着信ボタンを押した。


「もしもし」


「未来?」


いつもより低い哲平の声。


怒っているようにも、でも少し安心したようにも思える。


寝ないで待ってたの?


そんな哲平に、また胸が苦しくなった。


「ホンマにごめんなさい」


「うん」


「あんな、あれから…」


あたしは昨日の出来事を話した。


哲平の事を気遣う事は出来なかったけど、裏切るような事は何もしてない。


不安にさせたかもしれないけど、心配するような事は何ひとつない。