厳しい父さんだった。


女と子供は命を掛けて守れ。

それが出来ない男は、男じゃない。


それが父さんの口癖で、僕もそうなるように育てられた。


合気道を習い始めたのも、父さんが言ったからだ。



……だから、信じたくなかった。



目の前にある父さんの息が、だんだんと弱くなっているだなんて。



「今すぐお前も、そいつと同じようにしてやるよ!」



気付けば、目の前には返り血を浴びた男が、僕に向かってナイフを振り上げていた。



あ、やばい……。


殺される……。



本気でそう思った。



「っ……そら!!」



急に感じた、体の痛み。


ガンッと大きな音を立てて、肩が靴箱に打ち付けられた。


頭も打ってしまったのか、ほんの少しクラクラする。