コートを靡かせ、僕は街を見渡せるベンチへ自然と向かっていた。


ここは街よりも空が近い。


冬の澄んだ綺麗な夜空がとても綺麗だった。


『まあでも…さむいな…』

僕は肩を震わせながら歩いた。

もう夜も遅いので、
コート一枚でも流石に寒い。


なぜ僕はこんな中、一人でベンチに向かっているんだろう思う。

しかも今日は誕生日だというのに。



( 寂しい )とも思った。

だけど僕はきっと、寂しさや孤独を選んでしまっている。


誰かと打ち解けあったり、恋仲になったり、大切な存在になったりすることを。

きっとそれは、怖さじゃなく自身の無さなんだと僕は感じた。



そんなことをぼやぼやと考えているとベンチが見えた。

街の灯りが星空のように点々としていて、
少しここは明るかった。


しゃり


しゃり


足元から聞こえる音に違和感を覚えた。

『雪か?』

と夜空を仰いでみても、雪は降っていない。

そうなると答えは一つしかなく、


『あ、霜だ』


しかしやはり違和感を感じる。



僕の足元に霧のような冷たい冷気が広がり、すごく寒い。


歩みを進めると更に冷気が強くなった。


『さ、っむ。なにこれ…』


ベンチの向こうに薄着の女性が見える。

近づくと街の灯りでよく顔が見えた。


女性ではなく、その子は少女だった。



コート一枚でも震える寒さだというのに、

少女は肩を出したワンピース一枚を着ているだけで、裸足で立っている。



僕は何かに動かされるように、

彼女へと近づいた。





真っ白で、冷たい彼女の後ろ姿に

覇気は感じない。



風がヒューヒューと過ぎていく。


僕は意を決して声をかけた。


『あの…きみ…』



すぐに振り向いた少女は、


少し伸びた真っ白い髪の毛と、

宝石のように光る真っ赤な瞳をしていた。





きっと既に、僕は恋をしたんだと思う。