六月の下旬。

もうすぐ、夏の季節に入ろうとしていた頃。


「ナオー!ちょっとコンビニまで行ってきてくれへんー?」


一階から聞こえる母親の声に、ナオはビクリと体を揺らした。

窓から涼しげな風が入ってくるなか、ナオは自分のベッドの上で、昨日買ったばかりの雑誌を眺めていた。

「ナオー!」

何度も呼ばれる自分の名前に、ナオは苛立ちを募らせながらも母親の声を無視し続けた。

その結果がどうなるかは、自分でもよく分かっている筈なのに。


「ナオっ、」


ばんっと大きな音を立てながら開けられた自分の部屋の扉。

壊れてしまうんじゃないかってくらいの音の大きさに、ナオは少々怯みながらもきっと母親を上目で睨みつけた。